前世からの鼻歌

めずらしく夢をみた。
長い廊下に何枚もカーテンの仕切りがあって、向こう側がみえない廊下を
カーテンをくぐり、くぐりしながら歩いていた。
娘がそばを歩いていて、私は他の息子たちと最初は歩調を合わせていたが、
だんだんと自分と娘だけが早く前へ前へ歩いていた。
息子たちが今どのあたりにいるのかは、
区切られているカーテンのせいで見えなかったが、
そんなに後ろにいるわけもなく、あまり気にせずに、
すぐ来るだろうと思って歩いていた。
廊下には窓がついていて、外が見えた。
そこに何故か十字軍の男が二人。
嫌な予感がした。
廊下を歩き終わって、向こうのロビーのようなところで待っていたが、
息子が出てこない。
そこにいた二人の女が、
私を尋問し始めた。
二人の女は尋問しながら、色々情報をくれた。
自分の息子は殺されたらしい。
理由は思想犯の私の息子だからという理由。
・・・・・・・・
十字軍に特別な感慨はないつもりなのに、
何故か時々、意味不明に出てきて、
出てくると私は大抵、十字軍に酷い目に合されている。
必ず、白地に赤いクロスがちらちら見える。
お、おそろしぃぃいい。
最初に出てきたのは、おそらく前世療法を受けた時だと思う。
十字軍に街を攻め入られて、私は塔の中に隠れていた。
たぶんでも、あれだけではない気がする。
もっといろんな体験が私と十字軍にはある気がする。
思い出したくない。
あまりリアルには思い出したくない。
前世を思うと、
今のこの日本のような平和な時代はかつてなかった。
いつでも、もっと緊張していた。
動乱、混乱、暴力、略奪、
する側される側、色々だ。
よく小さなころ、今回はどうやら幸せっぽいな、
なんて幸せなんだろう・・と思って
一人で泣いた。
今回は幸せ。それがわかるだけでいい。
でも、それでも、今はない、
今は目の前にないはずの、
十字軍の陰に、
私は今でも怯えているのだ。
ただ、もう、正体はわかっている。
尻尾はつかんでいる。
あとはずるずると引き上げる作業に入るだけなのだ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加